Unit 8 腰痛のRed flags:まとめ

腰痛に関連する重篤な疾患として、馬尾症候群、悪性腫瘍、腹部大動脈瘤、骨折、感染について説明してきました。

これまでのRed flags をまとめると

  • 膀胱直腸障害:尿閉、便失禁
  • 広範囲にわたる下肢の神経症状
  • 肛門周囲の麻痺・感覚異常(サドル麻痺)
  • 異常歩行
  • 肛門周囲の痺れ
  • 肛門括約筋のゆるみ
  • 性機能の消失
  • 癌の既往歴
  • 50歳以上
  • 保存療法の効果がない
  • 説明のつかない体重減少
  • 多部位の疼痛、安静時痛、夜間痛
  • 時間や活動性に関係のない疼痛
  • 高齢
  • 骨粗鬆症
  • ステロイドの使用
  • 重大な外傷 
  • 軽微な外傷 *高齢者の場合
  • 打撲・擦過傷の存在
  • 男性
  • 65歳以上
  • 喫煙
  • 高血圧
  • 家族歴
  • 感染の兆候(eg.発熱)
  • 感染のリスク因子(基礎疾患の過程、免疫抑制、穿通創など)
  • 最近の手術歴 
  • 注射の使用歴 

などがあります。多いですね。

これを1つずつ確認することはありませんし、できません。

Red flag の評価は基本的にまずは主観的評価(問診)の中で確認していきます。

また、事前に問診用紙を用意する方法もあります。

主観的評価にてRed flags を確認・除外

Red flag を主観的評価の項目ごとに分けるとわかりやすいと思います。

ここでは、項目の例として、「年齢・性別」「現病歴」「治療例」「健康状態・既往歴」「仕事・生活習慣」をあげました。

「現病歴」の中で、受傷機転、症状、経過が確認できると思います。膀胱直腸障害に関することは、患者自らが訴えることはあまりないので、セラピスト側から+αで聞くといいでしょう。

「治療歴」、”保存療法の効果がない” を含めています。自身のマネジメントだけではなく、他院での治療歴を含めて考えます。

健康状態・既往歴では、重篤な疾患をすでに治療中の場合があります。

悪性腫瘍については、現在治療中なのか、治療は何をしているの、あどのくらいの頻度で通院しているのか、など確認する必要があります。

ステロイドの使用については患者自身が言うことは少ないように感じます。ステロイドを使用する疾患などがあれば、セラピスト側から聞くようにしたいです。問診票の情報や、電子カルテ上の医師からの情報で確認できる場合もあります。

難しいのが”その他”です。性機能の消失、説明のつかない体重の減少、打撲・擦過症の存在、家族歴、感染の兆候、感染のリスク因子などは、問診票に含むか、セラピストが意識的に訪ねるか、身体所見で確認しないとわからないですね。

家族歴については、聞かれるのを嫌がる患者もいます。

キーパーソンの把握というのは大事なことですが、整形外科クリニックで、特に中高年の場合、家族のことを聞かれて「なんでそんなことを聞くの?」「家族の情報が必要なんですか?」と言われる方もいます。

東京だからなのか、整形外科クリニックだからなのか・・・はわかりませんが、一定数いらっしゃいます。

私は「今、ご家族とお住まいですか?」から始まり、その反応をみて家族に関する追加の質問をするか、次回にするかを判断しています。

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Red flags を確認&記録

Red flags について確認することは大事ですが、それと同じくらいに大切なのが、”記録”です。

特に、開業をしている、将来の開業を視野に入れていたら、Red flags を確認、そして、記録する、がセットだと思います。

今は、事前の問診用紙が有用なのかなぁと思いつつ、初回評価用紙にRed flags を確認する項目を設けています。クリニックだと医師用のがすでにありますからね。

さて、このRed flags ですが、Red flags と重篤な疾患との因果関係などに関する報告は多くあります。

「Red flags が複数あったら、本当に重篤な疾患なんですか?」

「Red flags がなかったら、重篤な疾患ではないんですか?」

という疑問ですね。

Red flags と重篤な疾患の関係

Red flags が複数あっても重篤な疾患でないこともあるし、Red flgas がなくても重篤な疾患のこともあります。

Chad (2018)は、Red flags の有用性について、

「Red flags は重篤な疾患の除外も特定もしない。陰性尤度比が高いし検査後確率も低い。」

「研究では、違うコホートでレッドフラッグの症状率を比較することが可能な信頼できる方法はないため、全体的な有病率がわかならい。また、とても大きなサンプルサイズが必要なので、研究として難しい。」

「クリニカルガイドラインはRed flags を推奨しているが、より高い検査を必要ない患者にも行うことになる。クリニカルガイドラインは、診断精度が損なわれていることを報告せずに多くのRed flags を説明している。」

と述べています。

ちなみに、この文献のタイトルは「Red flag screening for low back pain: nothing to see here, move along: a narrative review(腰痛のレッドフラッグスクリーニング:ここで見るものはない、立ち止まるな:ナラティブレビュー)」です。目を引くタイトルですね。Red flags がうまくいかない理由と将来のLBPマネジメントモデルについて提案しています。

引用している文献で、椎体骨折のRed flags(年齢:74歳以上、重大な外傷、副腎皮質ステロイドの使用歴)の検査後確率が 0.37%-3.10% と述べています。

Red flags と重篤な疾患の関連性に関する研究は他にもあります。

Premkumar(2018)は、腰痛が主訴である 9940名の患者を対象にしたretrospective review(過去起点コホート研究)にて、「9940名のうち重篤な疾患だったのは、椎体骨折(5.6%)、悪性腫瘍(1.6%)、感染(1.2%)、馬尾症候群(0.4%)だった。Red flags に当てはまる場合は重篤な疾患を表す場合もあるが、1つや2つ当てはまらない場合も可能性を低くするわけではない。脊椎の悪性腫瘍だった患者のうち64%はRed flags がなかった。」

と報告しています。

さて、少し、、、というかとても難しいのですが、検査に関する知識として検査前確率、陽性尤度比、陰性尤度比、検査後確率、ノモグラムに関して知っておくと理解が深まります。

陰性尤度比が低いからいいという訳ではなく、検査前確率を前提にして、陽性・陰性尤度比を用いて、検査後確率を算出します。このとき、ノモグラムというものを使うとすぐわかるそうです。

ちなみに、尤度比、これは”ゆうどひ”と読みます。

”けんどひ”ではありません。犬ではないです(初めて見たときは、けんどひと読んでいました・・・)

統計学については、他の再度で詳しく説明されている方がいるので、書籍などと合わせて確認するといいと思います。

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まとめ Conclusion

Red flags が複数あっても重篤な疾患でないこともあるし、Red flgas がなくても重篤な疾患のこともあります。

Red flags のことを強調して、変に不安を煽ってもいけませんし、かといって、見過ごすわけにもいかないですね。

腰痛と関連する重篤な疾患は全体の1%と言われています。ただ、これは条件で異なるのではないか、と思います。

X線だけのクリニックよりも、MRIなどの設備が揃ったクリニックの方が下肢症状がある患者が訪れるでしょう。

また、診療科目によっても重篤な疾患は変わります。

年間1人いるかいないかですが、常に気をつけていたいと思います。

Key points

  • 腰痛に関連する重篤な疾患には、馬尾症候群、悪性腫瘍、骨折、化膿性脊椎炎、感染がある。
  • Red flags を確認、そして、記録することが重要である。
  • クリニカルガイドラインにRed flags と重篤な疾患に関して詳しいことは書いてないので、書籍、文献などで調べる。

おすすめの書籍

2009年出版です。Red flags に関連する疾患について、疾患別に説明しています。

2018年出版。非特異的腰痛、急性腰痛と慢性腰痛について理解を深めるのにおすすめの書籍の一冊です。”Red flags” についても記載があります。当研究所代表も分担執筆させて頂いています。

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