Unit 8 関節モビライゼーションの基礎知識⑥ 禁忌

関節モビライゼーションの禁忌

関節モビライゼーションを実施するかどうかはセラピストが毎回、判断しなくてはいけません。

実施する前に、この時期に、今の状態に対して、関節モビライゼーションを実施して問題ないか考える必要があります。

絶対的禁忌、注意が必要な状態、また、Red flagsを必ず評価し、疑わしい場合は記録に残し、受診を勧めることが大切です。

Red flags:重篤な状態また疾患の可能性を示すリスクファクター

絶対的禁忌(absolute contraindication)

  1. 脊椎の悪性腫瘍

  2. 馬尾障害・膀胱直腸障害

  3. 脊髄損傷を疑う兆候・症状、または、2つ以上の神経根症状

    腰椎椎間板ヘルニアの場合、解剖学的特徴から2つの神経根症状が誘発される場合がありますが、頸椎椎間板ヘルニアの場合、通常、1つの神経根症状が誘発されます。上肢痛と2つの神経根症状がある場合、頸椎へのモビライゼーションは禁忌となります。

    神経根症状・神経症状がある場合、1度、受診を勧めるべきです。神経障害性疼痛に対して薬物療法を検討する必要があります。

    *著者によっては、”1つ以上の神経根症状”と書かれている場合がありますが、1つ以上という表現だと1つも含まれてしまうため、ここでは2つと表記しています。

  4. 関節リウマチによる脊椎の靭帯の壊死 *特に頚椎

    頸部の回旋によって環椎横靭帯・翼状靭帯の損傷を生じる可能性があります。

  5. 活発な炎症、感染による関節炎

  6. 脊椎の骨疾患:例)重度の骨粗鬆症

    肋椎関節に対してマニピュレーション、腹臥位でのPAは肋骨を骨折させる可能性があります。

注意が必要な状態(precaution)

  1. 神経学的徴候の存在

  2. 関節リウマチ

  3. 骨粗鬆症

  4. 脊椎すべり症

  5. 過可動性

  6. 妊娠

  7. めまい

  8. 悪性疾患の既往歴

  9. リウマチ性多発性筋痛

注意が必要な状態の時は、どの部位に対して、どの関節モビライゼーションをしてはいけないか、です。

骨粗鬆症に対しては、腹臥位での胸椎のPAはできない(しない)けど、側臥位での胸椎回旋や座位での胸椎伸展の関節モビライゼーションは状態・状況に応じて実施する、という感じです。

妊娠(pregnancy)は時期によって、ホルモンの活動よって関節弛緩(joint laxity)が生じてくるというが理由の1つです。また、お腹に赤ちゃんんがいるので、関節モビライゼーションをするにしても肢位を考慮する必要がありますね。

めまい(dizziness)は理学療法士の対象となるめまいと、そうでないめまいがあります。めまいの理学療法に関しては、日本でも研究されている先生が多くいらっしゃいます。

ここで記載している以外にも、発赤・腫脹などの炎症所見がある急性期、治療により疼痛増悪する場合、他動運動テスト時に抵抗を感じる前に出現する疼痛、なども注意が必要です。

関節モビライゼーションを実施したら

注意が必要な状態に対して関節モビライゼーションを実施した後に限らず、関節モビライゼーションや運動を実施した後は、「今日、(初めて)○○しましたので、もしかしたら後で痛みがでるかもしれません。その場合、強さを調節するのでおっしゃってください」と必ず言うことが大切です。

特に、クリニックなど通院するスタイルの場合、次の来院につなげるためにとても重要です。

おすすめの書籍(Recommended books)

徒手療法に関する歴史、基礎理論、関節ごとの評価・治療方法について説明しています。日本語で徒手療法を調べたい場合、この書籍1冊をベースにして、Jstage で他の著者の文献を読んで比較すると知識が整理されると思います。

 

日本語版は第4版ですが、英語版は第6版が出版されています。図・写真もわかりやすく、エビデンスも変わっています。Web上では動画も見れるようになっています。Red flags についても記載されています。整形外科の評価法について英語で学びたい方におすすめの書籍の一冊です。

非特異的腰痛、急性腰痛と慢性腰痛について理解を深めるのにおすすめの書籍の一冊です。Red flags についても記載があります。心理社会的要因の評価なども紹介しています。オーストラリアの理学療法士ピーター・オー・サリバンの慢性腰痛の分類、また、治療方法についても紹介しています。

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