腰痛のRed flags:腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤のRed flags

腰痛に関連する重篤な疾患に腹部大動脈瘤があります。

腹部大動脈瘤(AAA:Abdominal Aortic Aneurysm)とは、血管壁に慢性炎症が引き起こされ、血管壁が弱くなり不可逆的に血管の拡張が進行する疾患です。

危険因子として、加齢、喫煙、男性、動脈硬化などがあります(今中 2016)。

腹部大動脈瘤は「破裂するまで自覚症状がないことが多い、破裂すると予後が極めて不良、破裂したら病院搬送前に半数が死亡する(渡辺 2016)」とあり、とても怖い疾患です。

腹部大動脈の正常径は腹部で20mmとされており、瘤を形成する場合または正常の1.5倍(30mm)を超えて拡大した場合に、腹部大動脈瘤と定義されています(大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 2011年改訂版)。

症状として、腰痛、腹部膨満感、便秘、拍動性腫瘍などがあります。

腹部大動脈瘤のRed flags として、以下のものがあります。

  • 男性
  • 65歳以上
  • 喫煙
  • 高血圧
  • 家族歴

65歳以上の男性、喫煙、高血圧・・・このパターンはけっこうありますね。

65歳以上の男性、喫煙、高血圧、非特異的な腰痛・・・このパターンもけっこうありますね。

ここに、家族歴、腹部膨満感、便秘が入ってきたら、注意でしょうか。

本邦のガイドライン(大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 2011年改訂版)では、男性、65歳以上、喫煙、高血圧、家族歴のリスクファクターに対して、腹部触診と腹部エコーをスクリーニングとしています。

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腹部触診とは

特異度75% 感度68% 

腹部大動脈は季肋下(肋骨の下の部分)から臍までの中点で腎動脈を出し、臍のところでで 2 つに分かれます(bifurcation

触診

  1. 臥位にて両膝を立てる。
  2. 季肋下(肋骨の下の部分)から臍まで視診・触診し、拍動性腫瘤(拍動するしこり)の有無を検討する。呼吸のコントロールが大切で触診や視診は呼気時に明瞭になる 。

渡辺(2016)は「日本人は瘤の直径が 35 mm を超えれば 80% 以上の症例で触知することができる」と述べています。

この腹部触診は容易に行えます・・・が、腹部大動脈瘤をほとんど経験することのないセラピストにとって、通常の拍動なのか、拍動するしこりなのか、定期的な腹部触診をしていないと判断が難しいところです。

男性、65歳以上、喫煙、高血圧、家族歴などのRed flags、姿勢・動作で説明のつかない腰痛、腹部膨満感、便秘といった症状があったら、除外するためにも腹部触診が必要でしょうか。

破裂リスク

年間破裂率は40mm未満で0%、50〜60mmで3〜15%、80mm以上で30〜50%と、拡大するにつれて破裂のリスクが増大します。腹部大動脈瘤の増大スピードは、約3〜5mm/年とされています(大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン 2011年改訂版)。

35mmの段階で触診してわかれば早期発見ですね。

本邦のガイドラインでも、腹部CTで外径が4.5cm未満の場合は半年後にCT再検としています。

三上・三木(腰痛のRed flags:非特異的腰痛のリハビリテーション 2018)は、「積極的な運動療法による心拍数や血圧の上昇、徒手療法による直接的な圧迫によって動脈瘤が破裂するリスクが考えられる」と述べています。

横隔膜リリースや腹部の深部筋エクササイズをする際、側腹部や下腹部を触診したり、促通するために圧迫することがありますが、

腹部大動脈瘤が疑われる場合、既往歴で腹部大動脈瘤がある場合、腹部の過度な圧迫には注意が必要です。

 

おすすめの書籍(Recommended books)

2009年出版です。Red flags に関連する疾患について、疾患別に説明しています。

2018年出版。非特異的腰痛、急性腰痛と慢性腰痛について理解を深めるのにおすすめの書籍の一冊です。”Red flags” についても記載があります。当研究所代表も分担執筆させて頂いています。

 

 

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