Unit 5 腰痛のRed flags:骨折

腰痛に関連する重篤な疾患の1つに”骨折”があります。

骨折の種類もさまざまですが、特に重要になるのは高齢者の脊椎圧迫骨折です。

高齢者の今までとは異なる急性の腰背部痛の場合、圧迫骨折 compression fracture がないか判断することが重要となります。

骨折のRed flags

骨折のRed flags として以下のものがあります。

  • 高齢
  • 骨粗鬆症
  • ステロイドの使用
  • 重大な外傷 
  • 軽微な外傷 *高齢者の場合
  • 打撲・擦過傷の存在

オーストラリアのガイドライン(Evidence-based Management of Acute Musculoskeletal Pain 2004)では、50歳以上、骨粗鬆症、副腎皮質ステロイドの使用の場合は軽微な外傷でも Red flags としています。

軽微な外傷はさまざまで、日常生活の作業(孫を抱えた、尻餅をついた、など)でも起こる可能性があります。

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ステロイドの使用ってどのくらいの期間?

英語文献には Taking corticosteroid と書かれていますが、corticosteroid とは、副腎皮質ステロイドのことを言います。

副腎皮質ステロイドの薬を使用する疾患はさまざまです。代表的なものには、関節リウマチ、膠原病、腎臓病などがあります。他にも、アレルギー性疾患、血液疾患などにも用いられます。

1948年に関節リウマチにおけるステロイドの抗炎症作用が報告されて以降、ステロイドは最も協力な抗炎症作用薬として臨床では広く使用されるようになりましたが、副作用が問題となっており(田中 2008)、副作用のなかでもステロイド性骨粗鬆症は頻度が高いと言われています。

副腎皮質ステロイドは少量でも危険性があり、使用後3〜6ヶ月で椎体骨折リスクがピークに高まると報告されています。

本邦のガイドライン(ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年版)でも、経口ステロイドを3ヶ月以上使用中または使用予定の患者に対しては、一般的指導が必要としています。

また、個々の骨折危険因子(既存骨折、年齢、ステロイド投与量、骨密度)をスコアで評価し、3点以上は薬物療法、3点以下は経過観察としています。

このスコアですが、既存骨折ありだと7点、年齢65歳以上だと4点)、ステロイド投与量(PSL換算mg/日)が7.5以上は4点となっており、これらに当てはまる場合は骨密度測定なしに薬物療法が推奨されています(宗圓 2018)。

例えば、経口ステロイドを3ヶ月以上使用中または使用予定の65歳以上の患者は、薬物療法との対象となります。

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骨粗鬆症はありますか?

「骨粗鬆症は骨折リスクが増大した状態である。WHOは、骨粗鬆症は疾患であり、骨折を生じるにいたる病的過程であり、骨折は結果として生じる合併症の一つである」と本邦のガイドラインに述べられています(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版)。

女性の場合、閉経後のエストロゲン分泌の低下が骨吸収を亢進させ、急激に骨量が減少するため、予防が重要になってきます(望月 2018)。

さて、初回の問診で患者に「骨粗鬆症はありますか?」と聞くことがあると思います。

「骨粗鬆症はありますか?」と聞くと、「ないです」と答えることがとても多いです。

しかし、次に「いつ検査をしましたか?」と聞くと、同様に「ないです」と返ってくることもとても多いです。

骨粗鬆症がないのではなく、骨粗鬆症の検査自体をしていない方がとても多いです。

検査をしたとしても「5年前です。」と答えることも珍しくありません。

「ないです」と答えた患者にはあ、必ず「いつ検査をしましたか?」と聞くことが大切です。

圧迫骨折の評価

圧迫骨折の身体評価には、骨折部の棘突起叩打痛(Closed fist percussion sign:Sensitivity 87.5% / Specificity 90.0%)、運動制限、臥位時の疼痛(supine sign)、神経学的所見などがあります。

Closed fist percussion test

また、身長が低くなった場合も圧迫骨折を示唆しており、3cm以上の身長低下がみられる場合は脊椎椎体骨折の存在が疑われます(鈴木ら 2018)。

高齢者、骨粗鬆症を治療中、急性の腰痛、痛みで横になれない、転んだ、といった場合には、圧迫骨折を疑い必要に応じて受診を勧めるべきでしょう。

しかし、X線だと診断ができない場合があります。

岸本(2011)は、「脊椎圧迫骨折のX線による診断は決して容易ではなく、単純X線で診断できない場合も多々あると伝えるべきである」「X線で圧迫骨折が見られる場合にも既存骨折か新規骨折か診断が難しい場合もある」と述べています。

X線で検査して圧迫骨折はないと言われたけど、別のクリニックでMRIをとったら圧迫骨折だったと言われたという患者もいます。

医師のいる医療機関に勤めている場合、自分の施設にどういった設備があり、骨粗鬆症・圧迫骨折に対して医師がどういった治療方針があるのか、確認する必要がありますね。

まとめ

関節リウマチ、膠原病、腎臓病などの疾患がある場合、ステロイド使用の有無の確認が大切です。

「骨粗鬆症はないです」と答えた患者には、必ず「いつ検査をしましたか?」と聞きます。

”高齢者”が今までとは異なる”急性”の腰背部痛を訴えた場合、”骨粗鬆症”、”痛みで横になれない”、”転んだ”、といった複数のRed flags がある場合、圧迫骨折を疑い必要に応じて受診を勧めるといいでしょう。

おすすめの書籍(Recommended books)

2009年出版です。Red flags に関連する疾患について、疾患別に説明しています。

2018年出版。非特異的腰痛、急性腰痛と慢性腰痛について理解を深めるのにおすすめの書籍の一冊です。”Red flags” についても記載があります。当研究所代表も分担執筆させて頂いています。

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