関節モビライゼーションの基礎知識:副運動

自動運動と他動運動の差

関節可動域を評価する際、自動運動テストと他動運動テストを行い、症状の有無、角度差、抵抗感などから原因を考える、というのは、学校、実習などで習うと思います。

他動運動と比較して、自動運動が著しく制限されているとき、原因は何でしょうか? 

例えば、自動運動で肩関節屈曲90°、他動運動では170°だった場合、疼痛などがあれば疼痛による制限ですが、疼痛がない場合は、筋機能や神経機能の問題などを考えます。

以下の症例を考えてみましょう。

主観的評価

  • Aさん 女性 50歳代
  • 現病歴:3ヶ月前から徐々に右肩に痛みがあり、痛い動作を避けて過ごしていたら徐々に腕が上がらなくなってきた。最初は夜間時痛があった。今は寝返りで右が下になると痛みがある。日常生活では痛みは落ち着いてきだけど、腕が上がらなくて困っている
  • 患者自身が考える原因:50肩
  • 仕事・生活習慣:家事、夫と2人暮らし、運動習慣は特になし
  • 健康状態:高血圧
  • 既往歴:特になし

さて、仮説として何が考えられるでしょうか。

「徐々に」ということで、受傷機転はありません。

また、疼痛軽減とともに可動域制限が出現してきています。

主観的評価を終えた時点でいくつかの疾患・病態が仮説としてでてきます。これらの仮説の順位を決めて、肯定・否定するために客観的評価を行います。

仮説として、肩関節周囲炎後の肩関節拘縮、凍結肩、腱板断裂などがあげられると思います。

年齢、受傷機転のなさから考えて、肩関節周囲炎後の肩関節拘縮または凍結型が疑われ、腱板断裂の可能性は低くなrます。もし、学生時代にover head throwing sport をしている場合、不安定性が隠れているかもしれません。

客観的評価

  • 姿勢: 右肩甲骨下方回旋位、翼状肩甲
  • 結髪動作:耳まで 
  • 結滞動作:殿部まで
  • 整形外科テスト:
    棘上筋・棘下筋:Drop arm test 実施不可, External rotation lag sign 最終域の保持は可能
    小円筋:Hornblower’s test 実施不可
    肩甲下筋:Lift off test 実施不可 Belly press 実施不可 
  • 触診:圧痛・萎縮なし
  • 自動運動テスト:屈曲90° 外転50° 外旋20°   内旋30°  水平屈曲 脇の下まで
  • 他動運動テスト:屈曲90° 外転50° 外旋25°  内旋35° 内転−5°p

可動域制限があるため整形外科テストの実施肢位がとれません。

また、自動運動テストと比較して、他動運動が同じくらい制限があります。

この場合、最終域の抵抗感を確認し、軟部組織、また、関節組織の問題を考えます。

もし、自動運動に伴う疼痛、他動運動では最終域の前に疼痛出現、防御性収縮による筋スパズム、腫脹などがある場合は、炎症の可能性を考える必要があります。

関節組織の問題を考えた場合、関節の動き、副運動を評価します。

副運動(accessory movement)

「患者自身が自動的に行えないが、他者が他動的に行える関節運動」を副運動といいます。
(メイトランド 脊椎マニピュレーション 原著第7版)

*この場合、副運動と関節の遊びを同義語で考えています。ちなみに、accessory はアクセサリーで「服飾品、装飾品」という意味ですが、医学用語では「副」として用いられています。

副運動を、関節の遊び(joint play)構成運動(component movement)の2つとして考える場合もあります。

関節の遊びには、転がり(roll)、滑り(slide)、軸回旋(spin)、離開(distraction)、圧迫(compression)などがあり、ゆるみの肢位にてセラピストが他動運動で評価します。

構成運動は、自動運動に伴って起こる関節包内の動きです。1つの関節ではなく、近くの関節も含みます。例えば、膝関節伸展時の、大腿骨に対する脛骨の前方滑り、脛骨の外旋、膝蓋骨の上方滑り、腓骨の上方滑り、です。

関節の遊びと構成運動の2つは、自動・他動運動時に疼痛なく全可動域を動かすため、また、外力を吸収するために必要と考えられています。

例えば、肩関節屈曲の制限があったら、上腕骨の下方滑り(関節の遊び)と、肩甲上腕リズム(構成運動)を考えましょう、ということです。

また、1つの関節の動きだけでなく、連動して動く別部位の関節の動き(運動連鎖)も考慮するといいでしょう。

例えば、肩関節屈曲時の胸椎伸展や第一肋骨下制です。

関節機能に問題がある場合、関節の遊びをだしたら、構成運動も修正する必要があります。

肩関節を例にすると、肩甲上腕肩関節の後方また下方への滑りを改善したら、次に、自動運動を行なって構成運動を行います。

関節モビライゼーションをしたら自動運動を行なって、動かし方、代償動作を修正する、ということです。

 

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