仙腸関節障害と疼痛部位

仙腸関節付近の疼痛は仙腸関節の可能を示唆すると一般的に言われています。

しかし、腰部の疼痛でも仙腸関節が原因の場合があります。

いわゆる関連痛ですね。

仙腸関節障害の疼痛部位に関する研究ですが、数多く報告されています。

仙腸関節障害の疼痛部位

Slipman CW (2000)は、仙腸関節のテストが陽性の腰痛・殿部痛がある患者50名(男性18名、女性32名)の仙腸関節の関連痛を比較・検討しました。

対象者のVAS、疼痛部位を確認した後に、仙腸関節に局所麻酔薬を注射し疼痛誘発検査を再度実施しVASが80%下がったものを研究結果に含めています。採用基準(inclusion criteria)は、仙腸関節のテスト5つのうち最低3つが陽性で、そのうちの2つはパトリックテスト、仙腸靱帯の圧痛が陽性としています。

結果はというと、

  • 47名(94.0%) 殿部痛 buttock pain
  • 36名(72.0%)下位の腰痛
  • 25名(50.0%)下肢痛
  • 14名(28.0%)膝より遠位の下肢痛
  • 7名(14.0%)鼠径部痛 groin pain
  • 6名(14.0%)足部痛

「統計的に優位な関連は、疼痛部位と年齢、若い患者は膝より遠位の下肢痛を訴える傾向にあった。仙腸関節由来の関連痛は腰部、殿部だけではなかった。関連痛に多様なパターンがある理由としては、関節複合体の神経支配、硬節痛の関連痛、隣接構造の被刺激性、仙腸関節のさまざまな部位の損傷などが考えられるだろう。」

と筆者は結論づけています。

Wurff P et al. (2006)は、L5以下で1つの仙腸関節付近の疼痛(下肢痛はあってもなくてもよい)、50日以上、VASが45mm以上の慢性疼痛患者に対して、2種類の局所麻酔薬の注射に対して responders(反応者)と nonresponders の関連痛エリアの違いを検討しました。

responders とは、注射後に最低1時間、疼痛が50%以上減っているグループを、それ以外を nonresponders としています。

結果として、

  • 関連痛の部位にグループ間の差はなかったが、疼痛強度マップ(intensity map)では差があった。
  • 両グループともに殿部、大腿、下腿の内外側、足部の内外側に関連痛があった。
  • 疼痛強度マップでは、 resoponders の100% は仙腸関節付近の疼痛、nonresponders の100%は坐骨結節だった。

「全体的に、関連痛マップは、仙腸関節以外の原因の慢性腰痛患者を、仙腸関節が原因と判断するためにあまり有用ではない。唯一の違いは、疼痛強度マップであった」

と筆者は述べています。

Kurosawa(2014)は、仙腸関節の部位ごとの関連痛について報告しています。

対象は、仙腸関節への注射にて70%の疼痛軽減が認められた仙腸関節機能不全の50名(男性25名・女性25名、平均58歳)です。腰痛・殿部痛がある患者のうち、22名(44%)は鼠径部痛、6名(12%)は大腿外側、3名(6%)は下腿外側にも疼痛を訴えていた。

方法は、仙腸関節を4部位に分けて(上の部位から0、1、2、3)、それぞれ針を刺し疼痛部位を確認、リドカインと造影剤を混ぜたものを注射して疼痛緩和を確認した、というものです。

結果は、

  • 殿部上部痛を訴える患者のうち88%(22/25名)が、0からの関連痛であった。
  • PSISの疼痛を訴える患者のうち96%(23/24名)は、1からの関連痛であった。
  • 殿部中央の疼痛を訴える患者のうち66%(22/32名)は、2からの関連痛であった。
  • 殿部下部の疼痛を訴える患者のうち86%(24/28名)は、3からの関連痛であった。
  • 22名(44.0%)は鼠径部の関連痛を訴えていたが、仙腸関節への針で疼痛を再現できたのは1名だけだった。疼痛緩和は仙腸関節の複数部位に必要なことが多いが、仙腸関節上部に注射をすると疼痛がやや緩和する傾向であった。
  • 大腿外側・下腿外側の関連痛は9名いたが、9名すべて注射により疼痛緩和した。

「結論として、仙腸関節上部の機能不全は殿部上部の疼痛、下部は殿部下部の疼痛と関連していた。鼠径部は仙腸関節上部の関連痛だろう。」

と筆者は述べています。

仙腸関節の中でも部位によって、関連痛のパターンが変わるということでしょうか。

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疼痛部位から仙腸関節障害を推測できる?

仙腸関節の関連痛のパターンはさまざまありました。

殿部痛・仙腸関節周囲の疼痛が最も多いですが、腰部痛や下肢痛などもありました。

さて、疼痛部位によって仙腸関節障害を推測できるのでしょうか?

仙腸関節周囲の疼痛の場合は仙腸関節が原因となっていることが多いです。

One finger test(Fortin finger test)といって、患者に人差し指を用いて痛みの部位を指すよう指示するテストがあります。

PSISの周囲2cm以内を指差せば陽性、仙腸関節の痛みの可能性が高いです。

しかしながら、腰部の疼痛でも仙腸関節が原因となっているケースが存在します。

ここが頭を悩ませるところなんですよね。

臨床では、腰椎屈曲・伸展時の腰部痛に対して、仙腸関節を徒手誘導して腰椎屈曲・伸展することで疼痛が消失することがよくあります。

疼痛部位は重要な情報の1つですが、疼痛の特徴、また、現病歴や疼痛誘発動作などの情報を加味して、腰椎由来か仙腸関節由来か主観的評価にて推測し、客観的評価にて確定または除外することが大切です。

主観的評価では、現病歴、疼痛部位、疼痛誘発動作などが参考になります。

  • 現病歴:妊娠・出産、外傷による骨盤帯の損傷など
  • 疼痛部位:仙腸関節付近の疼痛>腰椎・鼠径部・下肢の疼痛 
  • 疼痛誘発動作:寝返り、座位からの立ち上がり、歩行など下肢の動きが骨盤に伝わる動作

次回は、客観的評価(身体評価)で行う仙腸関節障害の検査について確認したいと思います。

 

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