Unit 14 症状と画像所見の関連性

多くの医師は診断するために、画像検査を行います。

症状と画像所見が一致しない場合、医師がどのような説明をしているのでしょうか?

画像上は問題ないので筋肉や身体の使い方を確認しましょうと伝えるのか、画像所見と症状を結びつけるように何かしら伝えるのか、それとも、症状と画像所見は一致しないことがあることを説明するのか、加齢による構造的変化を説明するのか・・・医師によると思います。

腰痛の症状と画像所見の関連ですが、「腰痛の症状と画像所見が一致しない、関連性が低い」ということが広く知られています。

腰痛の症状と画像所見の関連性

2001年、雑誌Spine に発表された有名な論文(Prospective cohort study)があります。

Jarvik JJ et al. 「The Longitudinal Assessment of Imaging and Disability of the back (LAIDBack) study」

現在、腰痛・坐骨神経痛がない成人(平均年齢54歳:35歳〜70歳)148名の腰部MRI(Magnetic responance imaging)を調査した結果、

  • 椎間板変性(Disc degeneration) 91%
  • 椎間板の高さ減少(Loss of disk height) 56%
  • 髄核突出(Protrusion) 32%
  • 線維輪の断裂(Annuar tear) 38%

が認められました。

*対象者は”現在、腰痛がない”ということですが、腰痛の既往歴は、0回が47%、1〜5回が39%、5回以上が15%となっています。

筆者はキーポイントとして5点述べています。

  1. 腰痛がなくてもMRIにおいて高い有病率を示している。
  2. 中等度・重度の正中の脊柱管狭窄、神経根圧迫、髄核脱出(Extrusion) は診断的・臨床的に関連している。
  3. 髄核脱出と神経根圧迫は加齢と関連していなかったが、以前の腰痛と関連していた。
  4. 椎間板膨隆、椎間関節の変性、終板の変化、中等度の腰椎滑り症は、加齢によって増えているが、腰痛の既往歴によって増えていない。
  5. 椎間板の変性、椎間板の高さ減少は、加齢と腰痛の既往歴と関連していた。

「腰痛と画像所見の関連性は低い」ということが述べられる時に、この論文がよく引用されています。

気をつけなければいけないのは、すべての腰痛が画像所見との関連性が低い、というわけではありません。

「腰痛と画像所見が一致しないこともあります」

「腰痛と画像所見が一致しないこともあります、変性は顔のシワと一緒ですから」と説明することがありますが、どの患者に、いつ、どうやって言えばいいのでしょうか。

私は、急性の非特異的腰痛患者に対しては「腰痛は少しずつ良くなりますから、普段通りの生活をしてくださいね」と言うようにしています。

また、非特異的腰痛患者が

「変性があると言われた、どうしよう」

「椎間板が狭くなっていると言われた、だから良くならない」

と画像所見について過度に気にしている場合、改善に影響を与えそうな場合に、

「腰痛と画像所見が一致しないことが研究で報告されています、変性は顔のシワと一緒ですから」と話をしています。

*医師がいる医療機関では、上記のようなことをセラピストが言っても問題ない職場なのかどうか、確認・判断した方がいいです。医師が変性があると述べて、セラピストが変性は関係ないと言って患者が混乱するのを避ける必要があります。

画像検査ですが、本邦の腰痛診療ガイドライン(2012)では、「腰痛患者に対してX線撮影を全例に行うことは必ずしも必要ではない(グレードA)」としています。

しかし、医師がいる医療機関のほとんどは画像検査をしています。

それがいいか悪いかは別として、

画像検査をしないことによって「あの病院では画像検査もしてくれない」というクレームになる場合があります。

ガイドラインで推奨していること、また、医師がいいと思ってしたことが患者の要望とずれた時、色々と起こるんですよね。

難しいところです。

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早期のMRI検査は手術実施率を上げる!?

早期にMRI検査をすることによって、不必要な治療や手術をする可能性があります。

Webster BS(2010)は、早期にMRI検査を実施したグループ(21.7%)はMRIを取っていないグループに比べ結果がより悪く、また、医療費と手術の実施率が上がったと報告しています。

本邦の腰痛診療ガイドラインでは、「腰痛患者が初診した場合に必要とされる診断の手順は、注意深い問診と身体検査により危険信号を察知し、重篤な脊椎疾患の存在を見落とさないことが重要である。これらの存在が疑われる場合や下肢痛などの神経根症状を伴っている場合、一定の期間(4〜6週間)の保存的治療でも改善が得られない際には、X線写真やMRIなどの画像検査を進めていくことが推奨されている(腰痛診療ガイドライン 2012)」と述べています。

なんでもかんでもすぐにMRIというのは良くないですよね。

画像所見と特異的腰痛

腰痛の症状と画像所見の関連性は低いと述べましたが、もちろん関連している場合もあります。

特異的腰痛ですね。

特異的腰痛(椎間板ヘルニア、圧迫骨折など)については、有用な情報であることも多いです。

特異的腰痛ではマネジメントが大きく変わります。

例えば、特異的腰痛の腰椎椎間板ヘルニアの場合、急性期では疼痛コントロールのために生活動作指導が重要となります。場合によっては動作を制限することもあります。

また、腰椎の圧迫骨折の場合、一定期間、コルセットを着用して対応しなくてはいけません。

非特異的腰痛の場合は逆ですよね。普段の生活を続けることを推奨し、コルセットは使用したとしても急性期の疼痛が強い時期しか使用しません。

また、特異的腰痛の場合、保存療法で効果がない場合は手術を検討する場合があります。非特異的腰痛の場合、手術を検討することはないですよね。

非特異的腰痛に対して介入していたとしても、経過の中で神経症状が出現した場合は特異的腰痛の可能性を考え医師の判断を仰ぐ必要があります。

 

 

 

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