Yellow flags:恐怖回避行動

不安を感じる人、不安を感じやすい人は痛みはを感じると、否定的な感情やネガティブな情報によって、破局的思考に陥り、さらに痛みに対する不安や恐怖心が引き起こされ、悪化を防ごうと過度に回避する行動をとるようになります。

そして、恐怖回避行動をとり続けることで不活動となり、不活動によって機能低下また痛覚過敏を引き起こし、疼痛を感じやすくなります。そして、疼痛を感じて・・・というように、悪循環に陥ります(恐怖回避モデル)(1)。

恐怖回避行動

疼痛を回避する単純な動作だけでなく、運動、行動、趣味など回避することを、恐怖回避行動といいます。文献によっては、恐怖回避思考と述べている場合もあります(2)。

ただし、動作を回避する動作は恐怖以外にも原因がいくつかあります。

私は、回避動作・行動がある場合、①通常の疼痛回避動作、②不適切なアドバイス・情報による疼痛回避動作、そして、③恐怖回避行動、の3つを考えています。

①通常の疼痛回避動作

通常、急性期では疼痛を回避する動作をとる傾向にあります。これは、組織に負担をかけない、組織の治癒促進のためには必要な動作”疼痛回避動作”です。

例えば、足関節外側靱帯損傷後に、下肢外旋位にして荷重をしないようにする歩き方などがありますね。

受傷機転、受傷時期、炎症症状などを考慮する必要があります。

②不適切なアドバイス・情報による疼痛回避動作

他の医療者、運動指導者、インターネット・テレビなどの情報などによって、不適切な動作をする場合があります。

例えば、「腰は曲げないように」や「良い姿勢は背中をまっすぐ」とアドバイスを受けた結果、腰椎を過度に緊張させて動作をする場合があります。

過度な腰椎周囲の緊張は、動きの多様性が減り、また、腰椎への圧迫ストレスの増大、胸郭拡張性低下による呼吸パターンの変化などを引き起こします。

これまでの治療歴や何かアドバイス(情報)を得たのか確認する必要があります。

③恐怖回避行動

冒頭で説明した内容ですね。

本来は普通にある疼痛回避動作が、不適切な情報や破局的思考や恐怖心と結びついて行動までが制限されてしまっている状態です。

急性期を過ぎて、組織の損傷も治癒しているのにもかかわらず、”恐怖”によって動作が制限され、そして、活動・参加などの行動にも影響を与えている場合、恐怖回避行動に陥っているのかどうか判断しなくてはいけません。

回避動作のスクリーニング

臨床(整形外科クリニック)では、

顔を合わせた時の表情、挨拶をしたときの表情・反応、受付からリハビリ室に入室してベッドまで歩く、荷物を置く、座る、座った姿勢の一連の仕草・動作を観察すると思います。

表情からは患者自身の心理状態・機嫌・体調、仕草・動作からは回避動作・行動があるか、動作が適切かどうかなどをスクリーニングします。

腰痛患者の場合、荷物の置き方は大切な評価となります。

西東京かとう整形外科では、荷物を置く位置を床にしている(スペース上の理由もあり)ため、荷物を置く動作が観察しやすいです。

左)両足を揃えて膝伸展位で腰椎屈曲動作優位で荷物を置く

中)片足を前にして前方に重心を移動させながら荷物を置く

右)腰椎伸展位を保持した状態で荷物を置く

この場合、回避動作かな?と推測するのは、右の動作でしょうか。中に大事な物でも入っているのか?とは思わないですよね。あくまでも回避動作かな?という感じです。

回避動作が活動・参加にも影響を与えているのか、また、日常生活動作や仕事などの作業動作に関連する回避動作はあるのか、恐怖に関連した回避行動が起きているのか、主観的評価および客観的評価にて評価する必要があります。

恐怖回避行動を評価する自己記入式質問用紙の1つに、TSK(Tampa scale for kinesiophobia)があります。

 

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TSK

TSK(Tampa scale for kinesiophobia)は、恐怖回避行動の有無を評価する自己記入式質問用紙で、日本語版は松平ら(2)により作成されています。

TSK(Tampa scale for kinesiophobia)は、全17問、最低17点〜最大68点となっており、カットオフ値は37点とされています(3)

点数の付け方は少し複雑です。問4、8、12、16は、1点〜4点までの点数を反対にしてスコアをつけます。

TSKのうち11問(1,2,3,5,6,7,10,11,13,15,17)からなるTSK-11も多く用いられています(4)。TSK-11は、回避行動(activity avoidance)と身体焦点(somatic foucs)の2つの因子をみているそうです。

TSKですが、質問内容がなかなかネガティブです。

日本語版 Tampa Scale for Kinesiophobia

  1. 運動すると体を傷めてしまうかもしれないと不安になる

  2. 痛みが増すので何もしたくない

  3. 私の体には何か非常に悪いところがあると感じている

  4. 運動したほうが私の痛みはやわらぐかもしれない

  5. 他の人は私の体の状態のことなど真剣に考えてくれていない

  6. アクシデント(痛みが起こったきっかけ)のせいで、私は一生痛みが起こりうる体になった

  7. 痛みを感じるのは、私の体を傷めたことが原因である

  8. 私の痛みが何かで悪化しても、その何かを気にする必要はない

  9. 予期せず体を傷めてしまうかもしれないと不安になる

  10. 不必要な動作を行なわないよう、とにかく気をつけること が、私の痛みを悪化させないためにできる最も確実なことである

  11. この強い痛みは私の体に何か非常に悪いことが起こっているからに違いない

  12. 私は痛みがあっても、体を動かし活動的であれば、かえって体調は良くなるかもしれない

  13. 体を傷めないために、痛みを感じたら私は運動をやめる

  14. 私のような体の状態の人は、体を動かし活動的であることは決して安全とはいえない

  15. 私はとても体を傷めやすいので、全てのことを普通の人と同じようにできるわけではない

  16. 何かして私が強い痛みを感じたとしても、そのことでさらに体を傷めることになるとは思わない

  17. 痛みがある時は、誰であっても運動することを強要されるべきではない

まとめ

患者と対面した時の表情、リハビリテーション入室から荷物を置く、座るまでの一連の仕草・動作を評価すると、無駄のない評価が行えます。

回避動作、回避行動が観察されたら、①通常の疼痛回避動作、②不適切なアドバイスによる疼痛回避動作、そして、③恐怖による回避行動、を考えるといいかもしれません。

必要に応じてTSKを実施して、恐怖回避行動を多面的に評価する必要があるでしょう。

References

  1. 斎藤・三木:心理社会的要因が腰痛に与える影響と評価方法, 非特異的腰痛のリハビリテーション, 羊土社, 2018
  2. 松平・他:日本語版Tampa Scale for Kinesiophobia(TSK-J)の開発:言語的妥当性を担保した翻訳版の作成, 2013
  3. Vlaeyen et al. :Fear of movement /(re)injury in chronic low back pain and its relation to behavioral performance
  4. Weermeijer JD & Meulders A:Tampa Scale for Kinesiophobia, 2018

おすすめの書籍

2018年出版。ピーター・オー・サリバンの慢性腰痛の分類を軸に紹介しています。心理社会的要因とは、心理社会的要因の評価(カットオフ値も掲載)、心理社会的要因が多い腰痛のマネジーメント、また、認知行動療法について説明されています。当研究所代表も分担執筆させて頂いています。

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