Yellow flagsの評価:不安・うつ

心理社会的要因の評価項目には、「不安・抑うつ」「破局的思考」「恐怖回避行動」「自己効力感」「仕事によるストレス」などがあります(1)。

不安を感じやすい人は痛みはを感じると、否定的な感情やネガティブな情報によって、破局的思考が引き起こされ、さらに不安が増強することで、過剰な回避行動となります(恐怖回避モデル)。

今回は、「不安・抑うつ」について考えたいと思います。

不安・抑うつとは

病院・クリニックに来院する多くの患者は不安を抱えています。

どこが悪いのか、治るのか、重い病気じゃないか、活動や参加が制限される、今までできたことができなくなる、将来どうなるのか、経済的な問題などで、不安、また、抑うつ状態になります。

抑うつ状態とはうつ状態と同義で、精神運動活動が抑えられている状態、本人に抑うつ気分(気分が沈む、うつつしている、など)が見られる状態のことをいいます(2,3)。

抑うつ状態がリハビリテーションに影響を与える点として、以下の点が考えられます。

  • 痛みやしびれを強く感じる
  • 課題や身体運動への注意低下
  • モチベーション低下
  • 再学習効率の低下
  • 食事・睡眠不足による疲労、回復力低下、体力低下
  • 廃用の進行

抑うつ状態は、さまざまな障害で認められますが、内因性の「うつ病」という疾患になる場合、対応が変わります。

また、専門家への紹介、専門家による治療が必要です。

先崎(2018)は、

内因性うつ病の場合、無理をさせない、負荷をかけない、励ましや侵襲的な評価を控えて安静を志向すべきとしています。

また、院外の精神科に受診させた方がよい「うつ」を以下のように述べています。

  • 内因性のうつ
    – 本来なら気分が落ち込まなくてもよい条件や場面で、理解できない喜怒哀楽の感情体験の制止があり、気分の低下が続いている場合
  • 自死の可能性が極めて高い
    – 自殺しない約束をしても返事がえられない
    – 視線が合うことを避ける
    – 握手をしても握り返さない
    – 通常量の向精神薬では不安・焦りが改善しない
  • 昏迷状態になり意思疎通が困難になりつつある場合

不安・抑うつの評価

先崎(2018)は、「内因性うつ病の「うつ」を含めてすべての「うつ」を把握するためには、質問票や問診票を利用して症状を確認するというのが、精神科専門医や臨床心理士がいないリハビリテーション医療の現場では1つの現実的な方法である」「なお精神科では、質問票はむしろ使用せず、通常の問診や観察によって診断する」と述べています。

(私もそうですが)精神・心理の専門家ではないセラピストは、スクリーニング評価においては質問用紙を用いた方がいいですね。

質問用紙を用いてスクリーニング評価が毎回必要か?というと、私は毎回はしていません。初回から不安・抑うつを評価することもしていません。

身体機能の改善、また、日常生活動作や仕事・趣味活動に参加できるようになってくることで、不安・抑うつ状態がなくなる患者は多くいます。

不安・抑うつ状態がとても強い患者を担当した時、急性腰痛であれば StarT back screening tool で、心理面の簡単な評価をしています。

しかし、慢性腰痛や他部位の疾患で、不安・抑うつ状態がとても強く、また、継続してあり、リハビリテーションに影響を与えそうで、かつ本人に説明が必要だと判断した場合は、質問用紙を用いています。

そして、結果をもとに、再度、丁寧な問診をして傾聴、説明をするように心がけています。

抑うつ状態(または、うつ病)を評価する自己記入式の質問用紙を調べてみると、いろいろありました。Self-rating Depression Scale(うつ性自己評価尺度)など、心理検査として算定可能なものもあるそうです。

  • Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)

  • BS-HOP
  • Primary Care Evaluation of Mental Disorders 
  • Self-rating Depression Scale(うつ性自己評価尺度)

  • Beck Depression Inventory(Beck 抑うつ評価尺度)
  • Geriatric Depression Scale
  • 老年期うつ病評価尺度(geriatric depression scale15:GDS15)
  • Hmilton Rating Scale for Depression(HAM-D)*観察式
  • CES-D(center for epidemiological studies of depression scale)

これらをすべて網羅するのは難しいです。というか、できません。

不安・抑うつ状態を評価する自己記入形式の質問用紙はさまざまありますが、それぞれ長所・短所があるため、リハビリテーション領域でよく用いられているもの、職場の医師と共通認識しやすいもの、また、働いている施設で使いやすいものを選択する必要があると思います。

リハビリテーション領域でよく用いられる(紹介されていることが多い)自己記入式質問用紙に、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)があります。

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HADS

ZigmondとSnaith が開発したHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale )は、不安(anxiety)とうつ(depression)の2つをスクリーニング評価することができます(5)。

調査項目が少なく、簡便で利用者への負担が少なく、対象者の心理状態のスクリーニングとして有用です(6)。

HADS は、うつの診断基準をすべて含んでいません。睡眠、自傷、自殺願望などについては、問診にて確認が必要です。

不安に関する質問7問、うつに関する質問7門で構成されており、所要時間は2〜5分となっています。奇数の項目が不安、偶数の項目が抑うつを評価しています。

スコアの計算は少し複雑です。

  • カットオフ値:
    0-7:なし
    8-10:軽度
    11-14:中等度
    15-21:重度

    *文献5では、8-10:Mild、 11-14:Moderate、15-21: Severeとしていますが、文献6では、0-7:non(なし)、8-10:doubtful(疑わしい)、11-21:definitex(明確)としています。

  • anxiety
    特異度 specificity 78% / 感度 sensitivity 90%
  • depression
    特異度 specificity 79% / 感度 sensitivity 83%

日本語版HADSの質問項目は以下のようになっています。

  1. 緊張したり気持ちが張りつめたりすることが;
  2. むかし楽しんだことを今でも楽しいと思うことが;
  3. なにか恐ろしいことが起ころうとしているという恐怖感を持つことが;
  4. 物事の面白い面を笑ったり、理解したりすることが;
  5. 心配事が心に浮かぶことが;
  6. きげんの良いことが;
  7. 楽に座って、くつろぐことが;
  1. 仕事を怠けているように感じることが;
  1. 不安で落ちつかないような恐怖感を持つことが;
  1. 自分の顔、髪型、服装に関して;
  2. じっとしていられないほど落ち着かないことが;
  1. 物事を楽しみにして待つことが;
  1. 突然、理由のない恐怖感(パニック)におそわれることが;
  1. 面白い本や、ラジオまたはテレビ番組を楽しむことが;

最近、初めての車検前日に車をぶつけて、子供にMac を破壊されて、けっこう凹んでいる中村が日本語版HADSをやってみました。

結果は、不安が10点、抑うつ状態が11点です。

11点までは中等度、疑わしいです。

身体に痛いところはないですが、心が痛いです・・・私は超ポジティブとよく言われますが、今回はけっこう落ちこみました。

ちなみに、破壊されたMac です。トラックパッドが割れています。指をなかなか認識しないときがあります・・・。

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まとめ

不安・抑うつは多くの患者が抱えています。

不安はあって当たり前だと思います。

不安があるからYellow flagだ!ではなく、過度な不安が改善に影響を与えそうだ、慢性化になりそうだと判断したとき対応が必要だと思います。

不安があっても、身体機能の改善、また、日常生活動作や仕事・趣味活動に参加できるようになってくることで、不安・抑うつ状態がなくなる患者は多くいます。

内因性の「うつ病」の場合は、患者への対応が変わるので注意しましょう。

また、抑うつが病的な状態になっている場合は、医師と情報共有し、専門家の紹介、治療を検討するといいと思います。

References

  1. 斎藤・三木:心理社会的要因が腰痛に与える影響と評価方法, 非特異的腰痛のリハビリテーション, 羊土社, 2018
  2. 馬場:うつ病・抑うつ状態とアパシー, BRAIN and NERVE, 2018
  3. 先崎:抑うつ状態, 総合リハビリテーション, 2007
  4. 先崎:リハビリテーション患者のうつにどう対応するか, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine, 2018
  5. Anna FS 2014:The Hospital Anxiety and Depression Scale, Occupational Medicine, 
  6. 八田・他 1998:Hospital Anxiety and Depression Scale 日本語版の信頼性と妥当性の検討 -女性を対象とした成績- 心身医

おすすめの書籍

2018年出版。ピーター・オー・サリバンの慢性腰痛の分類を軸に紹介しています。心理社会的要因とは、心理社会的要因の評価(カットオフ値も掲載)、心理社会的要因が多い腰痛のマネジーメント、また、認知行動療法について説明されています。当研究所代表も分担執筆させて頂いています。

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