Yellow flags:恐怖回避モデル

急性疼痛においては、受傷機転、受傷時期、損傷部位、組織損傷の程度、などから病態を考えます。

一方で、慢性疼痛においては、恐怖回避モデル(fear avoidance model)から病態を捉えることが重要です(1, 2, 3)。

恐怖回避モデル 

痛みを体験したときに2通りの経路があります。

1つは、痛みを体験した時に恐怖がない場合の経路です。痛みを体験した時に、不安や恐怖がなければ正常な回復過程になります(図右)。

一方、不安を感じてしまう人、破局的思考になる人は、悪循環の経路に入ります。

不安を感じる人は痛みはを感じると、否定的な感情やネガティブな情報によって、破局的思考が引き起こされ、さらに不安が増強することで、過剰な回避行動となります(1,2,3)。

不安を感じる人、不安を感じやすい人は痛みはを感じると、否定的な感情やネガティブな情報によって、破局的思考

そして、恐怖回避行動をとり続けることで不活動となり、不活動によって機能低下また痛覚過敏を引き起こし、疼痛を感じやすくなります。そして、疼痛を感じて・・・というように、悪循環に陥ります(恐怖回避モデル)(3)。
 

ネガティブな情報というのは、友人、雑誌、インターネットなどの情報はもちろん、医療者からの誤った情報もあります。なので、セラピストがネガティブなことを言い過ぎるのは注意しなくてはいけません。

痛みを体験した時に、回避、防御、保護という反応は、普通にみられます。疼痛回避姿勢、疼痛回避動作です。

急性期では、組織に負荷をかけないために疼痛回避姿勢・動作は必要です。なので、無理に姿勢・動作を修正はしません。

しかし、組織が回復しているにもかかわらず、疼痛回避姿勢・動作が残存している場合は二次的な機能障害を引き起こすため介入が必要となります。

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安心を与える

セラピストがネガティブな情報を与えることで、破局的思考を作り出す可能性があります。

O’Sullivan(2014)は、急性の非特異的腰痛に対しては、「腰が弱い」、「変性がある」、「○○が切れている」、「痛みがあったら〇〇は避けてください」、「○○は避けた方がいい」、「将来○○になる」という言葉は改善に悪影響を与えると述べています。

これらの言葉を絶対使ってはいけないか・・・というと、病態、患者の性格、タイミングを考慮して、言葉を工夫する必要があります。

炎症、特異的腰痛、原疾患が明らかな場合などは、組織の回復を促すために「○○に負担をかけないように、〇〇をするときはこうしてください。」と、回避動作を提案することはあります。

ただし、組織が回復してきたら、必ず元の動作に戻します。元の動作が大丈夫だということを確認します。

「腰が弱い」という表現・・・部位では言いませんが、機能障害因子について述べることはあります。

ただし「筋力が弱い」と単独では使わず、先にいいところを述べてから言ったり、どうすればいいかという提案を一緒に言います。

例えば、「○○はとてもいいですが、〇〇の筋力が少し弱いです」「○○の筋力は少し弱いので、運動をしましょう」とかですね。

一方で、無茶をする人には「○○の可能性があるので気をつけてください」と注意換気する場合もあります。

○○が切れている・・・椎間板に対しては言わないですが、肩の腱板損傷では説明に使うことはあります。

「変性がある」というのは、どの疾患に対しても今は使わないですね。

繰り返しになりますが、病態、患者の性格、タイミングを考慮して、言葉を工夫する必要があるということです。

O’Sullivan は、急性の非特異的腰痛に対してはネガティブなアドバイスはしないで、セラピストが患者に対して安心を与えることは治療では有用と述べています(4)。

私は臨床でよく使うのは、

「痛みはよくなってくるので、普段の生活をしてください。」

「変性は顔のシワと同じです」

「変性は白髪と一緒です」

ですね。

ただ、言葉で言うのは簡単です。

事務的に「痛みはよくなってくるので、普段の生活をしてください。」と言っても患者は安心しません。

患者本人が安心するためには、言葉だけでなく、セラピストの表情、態度、作り出す雰囲気などがとても重要です。

痛みが良くなるかわからない、から言うのをためらってしまうかもしれませんが、痛みがこれから悪くなるかもわかりません。

なので、安心を与えるという意味で、非特異的腰痛に対しては「痛みはよくなってくるので、普段の生活をしてください。」がいいのではないでしょうか。

References

  1.  The Fear Avoidance Model of Musculoskeletal Pain: Current State of Scientific Evidence
  2. 壬生・西上;慢性痛のリハビリテーション・オーバービュー, 2017
  3. 西上:腰痛が生じるメカニズム, 非特異的腰痛のリハビリテーション, 2018
  4. O’Sullivan, P & Lin, I: Acute low back pain: Beyond drug therapies, Pain Management Today, 2014

おすすめの書籍

2018年出版。ピーター・オー・サリバンの慢性腰痛の分類を軸に紹介しています。心理社会的要因とは、心理社会的要因の評価(カットオフ値も掲載)、心理社会的要因が多い腰痛のマネジーメント、また、認知行動療法について説明されています。当研究所代表も分担執筆させて頂いています。

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