主観的評価:症状の傾向

評価には、主観的評価(Subjective Examination)”問診” と、客観的評価(Objective Examination)”身体評価”があります。

主観的評価では、

  • 現病歴
  • ボディチャート
  • 症状の傾向
  • 治療歴
  • 仕事・生活習慣
  • ゴール・期待
  • 機能評価
  • 健康状態:合併症
  • 既往歴:過去の治療歴・過去の手術歴
  • 服薬

などを確認します。

今回、症状の傾向について考えたいと思います。

症状の傾向

    

ボディチャートを作成しながら、症状の傾向を評価していきます。

(ボディチャートについては、「主観的評価:ボディチャート」をご参照ください。)

症状の傾向は、増悪要因、軽減要因、24時間の変化について確認していきます。

ここでは、増悪要因について述べます。

増悪要因は、力学的ストレスの推測、Irritability の評価、客観的評価の指標になります。

疼痛が主訴の場合、特に侵害受容性疼痛の場合、増悪要因は 姿勢、動作に関係していることが多いです。

動作には、前屈・後屈といった単純な動作、日常生活動作、仕事に関連する動作、習慣などを含みます。

Smart KM et al(2012)は、疼痛メカニズムの分類(侵害受容性疼痛・末梢神経障害性疼痛・中枢性疼痛)について報告しています。主観的評価における侵害受容性疼痛の症状として、「機械的/解剖学的性質が増悪要因と軽減要因と明確に比例している」「外傷、病理学的プロセス、動き/姿勢の機能障害に伴う疼痛」と述べています。

また、姿勢・動作以外に環境などが疼痛増悪の原因になります。

仕事をしている方に対しては、

「平日と休みの日で痛みは変わりますか?」

という質問をしてみるのも1つの方法ですね。

例)右腰部の疼痛

「どういう時に痛みますか?」、「腰の痛みはどうするとより痛くなりますか?」または、より具体的に「何か姿勢や動作で痛みが強くなることはありますか?」と質問します。

例えば、「長時間立っていると右の腰が痛いです。立ち上がりや、歩いていると右の腰が痛くなる」という場合、

増悪要因は、

立つ=姿勢

立ち上がり=動作

歩く=動作

になります。

姿勢や動作だけでなく、日常生活動作や仕事、環境によって疼痛が増悪・軽減するか確認することも必要です。

疼痛の増悪要因を確認したら共通する力学的ストレスを推測します。

立位、歩行時に疼痛が誘発され、座ると軽減することから、伸展ストレス増大による疼痛誘発かもしれません。

より詳細な情報を得るために、疼痛誘発のタイミングを確認することが重要です。

この例の場合、客観的評価の自動運動テストはどうなるでしょうか?

腰椎伸展で疼痛誘発、屈曲は問題ないかもしれません。もちろん、違う場合もあります。

バイアスになりすぎないよう気をつけながら、予測して客観的評価につなげていきます。

 

動作の強度、疼痛の重症度(NRSで評価)、疼痛誘発・消失までの時間を総合的に判断して、Irritability(過敏性)の高さを考えます。

Irritability が高い場合、客観的評価は制限されます。疼痛が誘発して残存してしまったら評価ができなくなりますからね。

疼痛誘発動作は基本的には行わず、行うにしても肢位を変えての評価を検討します。腰椎伸展動作で疼痛誘発が考えられる場合、座位での骨盤前傾、四つ這いでの腰椎伸展などから評価してもいいと思います。

また、疼痛が軽減する動作、場合によっては疼痛回避動作の指導を考えていきます。

「姿勢や動作に関係ない」「何をしていても痛い」という場合は、炎症または感作、非器質的疼痛の可能性を考えます。

 

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症状の傾向表

症状の傾向は、項目ごとにスペースを作って記録されることが多いです。

ただ、症状の傾向をボディチャートやスペースに記載すると乱雑になってしまったり、相互関係がわかりづらいことがあったため、症状の傾向表を作成し、臨床で用いています。

症状の傾向を表にして記録することで、疼痛の関連性、増悪・軽減要因の関連が一目でわかります。

方法は2つ

1つめは、増悪要因・軽減要因・24時間の変化を記録する方法です。これは、従来の方法を表にしました。

2つめは、姿勢・動作・時間帯の項目ごとに増悪要因・軽減要因・24時間の変化を記録する方法です。

 

症状の傾向表:増悪・軽減要因・時間帯

縦軸に「増悪要因」「軽減要因」「時間帯(表では字数の関係で”24時間の変化”ではなく”時間帯”としています)」があります。

増悪要因に疼痛の種類を書きます(Pa、Pb)。

疼痛ごとの増悪要因(姿勢、動作)をNRS とともに記録します。

軽減要因がない場合、問題がない姿勢や動作を軽減要因の欄に  ✔︎して記録します。

この例で考えると、右腰部の疼痛(Pa)は、30分以上の立位(姿勢)で2/10の痛みがあり、20分以上の歩行で4/10の痛みがあります。立ち上がりや座位では痛みがありません。

大腿部の疼痛(Pb) は Pa と同じく20分以上の歩行で痛みがでます。関連痛かもしれません。

 

症状の傾向表:姿勢・動作・時間帯

縦軸に「姿勢」「動作」「時間帯(表では字数の関係で”24時間の変化”ではなく”時間帯”としています)」があります。

症状の傾向の横に「疼痛」を書き、姿勢・動作の項目には、具体的な姿勢や動作を書き、それぞれのNRSを記録します。

増悪要因は↑、軽減要因は↓、問題ない姿勢や動作は✔︎としています。

この例で考えると、疼痛部位は2カ所あります。右腰部(Pa)と大腿後面(Pb)です。

Pbは歩行時に20分経つと腰痛(Pa)とともに出現するようです。関連痛かもしれません。

膝から遠位に症状はなく、腰部・大腿後面にある疼痛の性質から考えても神経障害性疼痛の可能性は低くなります。

客観的評価では、ルールアウトのために神経ダイナミックテストをするにしても、神経学的テストまでは行わない、と思います。

 

疼痛出現まで時間があり、疼痛の強さも最大で4/10、座るとすぐに疼痛がなくなるので、Irritability は低いと判断し、客観的評価では疼痛誘発をするような検査も実施しよう、また、疼痛が出現しなければ負荷を上げてみよう、オーバープレッシャーをかけよう、と考えます。

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疼痛が1つの場合は、別の書き方もできます。

姿勢・動作の項目に疼痛 Pa を書いて、具体的な内容を右欄に記入します。

症状を比較する必要がないので、この書き方が可能です。

次に、疼痛と痺れがある場合です。

症状の傾向の横に「疼痛」と「痺れ」を書き、姿勢・動作の項目には、具体的な姿勢や動作を書きます。

疼痛と痺れが主訴の場合、痺れの内容をボディチャートに記録してもいいと思います。

自分がわかりやすい記録方法を選択

症状の傾向の記録のために、症状の傾向表を用いています。

症状の傾向表は2種類あります。

従来の方法をただ表にしたものと、姿勢・動作・時間帯の項目ごとに増悪要因・軽減要因・24時間の変化を記録する方法です。

自分に合った方法を選択するといいのではないでしょうか。

複数のセラピストがいる施設の場合、記録方法を統一することもありですし、複数の書き方があってもいいと思います。