腰椎の術後に対する神経モビライゼーションの効果

腰椎の術後に対する神経モビライゼーションの効果

神経根の癒着や滑走性の改善のために神経モビライゼーションが用いられます。

「腰椎術後患者に対して、神経モビライゼーションは有効か」という臨床での疑問(クリニカルクエスチョン)について、システマティックレビュー(以下、SR)、次にランダム化比較試験(以下、RCT)を確認したいと思います。

まず、Madera Mら(2017)によるSR「The role of physical therapy and rehabilitation after lumbar fusion surgery for degenerative disease: a systematic review」です。

腰椎固定術後の理学療法とリハビリテーションについて、PRISMA声明に従ってSRを実施しています。

術後のリハビリテーション(心血管系のエクササイズ、軟部組織モビライゼーション、神経モビライゼーション、モーターコントロール&ストレングス二ング、関節モビライゼーション、患者教育)についてNASS grades を用いて記述しています。

MaderaのSRでは、「腰椎術後の神経モビライゼーションはエビデンスが不十分なため推奨度は認められない」としています。

ただし、筆者の意見として「We recommend that care providers consider early nerve mobilization as a treatment option in postoperative fusion rehabilitation to improve ROM by decreasing postoperative nerve tension and decreasing scar tissue adherence to the nerve」というように、腰椎術後の早期の神経モビライゼーションについては肯定的な意見です。

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次に、Basso A ら(2017)による「The effectiveness of neural mobilization for neuromusculoskeletal conditions: a systematic review and meta analysis」では、腰椎術後を含めたさまざまな疾患に対する神経モビライゼーションの有効性を検討しています。

40の研究(年齢18歳以上の患者1,759名)を採用、手根管症候群(以下CTS:carparl tunnel syndrome)、神経に関連する腰痛、神経に関連する頸部痛・上肢痛についてメタアナリシスが実施されました。採用されている研究デザインはRCTで、case report, case-control study, cohort study は除外されています。

神経モビライゼーションのテクニックはさまざまですが、最もよく評価されたテクニックとして、

  • 神経モビライゼーションエクササイズ(原文:Neural mobilisation exercies):CTS 
  • 頚椎側方グライド:神経に関連する頸部痛・上肢痛 、上腕骨外側上顆炎
  • スランプポジションでのモビライゼーション:神経に関連する腰痛

    *文中では、mobilization in the slump position とありますが、表中の採用論文の内容をみると、stretch であり、slider や tensioner ではありません。

  • SLRモビライゼーション:神経に関連する腰痛、足根管症候群、足底踵痛、腰椎術後の腰痛

    *SLRモビライゼーションとありますが、採用文献の1つを確認すると Butler の方法を実施しており、腰椎の側方グライドは行なっていない模様

としています。

このSRの結果はというと、

  • 神経モビライゼーション(slump & slr moilisation & cervical lateral glide)は、神経に関連する腰痛および神経に関連する頸部・上肢痛、また足底・踵の痛みを有する患者の疼痛と機能障害の改善に有効である。
  • 神経モビライゼーションは、手根管症候群の疼痛の改善については有効ではない。
  • 上腕骨外側上顆炎(lateral epicondylalgia)、肘部管症候群(cubital tunnel syndrome)、腰椎術後(post lumbar surgery)、足根管症候群(tarsal tunnel syndrome)は、研究が少ないため効果は不明。

Madera と同じく「腰椎術後の神経モビライゼーションの効果については研究が少ないので効果は不明」ということです。

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RCT:Scrimshaw(2001)

さて、Madera(2017)と Basso(2017)ともに、Scrimshaw(2001)の文献を引用しています。

Madera「神経モビライゼーションを実施した群とコントロール群の術後1年ではMcGill pain questionnaire、Quebec disability scale に有意差は認められなかった(Scrimshaw 2001)」

Basso 「腰痛術後患者がSLRモビライゼーションと通常の治療を受けた結果、神経モビライゼーションは通常の治療と同様の効果であった(Scrimshaw 2001)」

ということで、Scrimshaw(2001)の研究では、神経モビライゼーション群とコントロール群の間で有意差がなかったということです。

では、Scrimshaw (2001)「Randomizaed controlled trial of neural mobilization after spinal surgery」を詳しくみてみましょう。

対象は、椎間板摘出術(lumbar discectomy)、固定術(fusion)、椎弓切除術 (laminectomy)を行なったシドニーの病院にいる81名の腰椎術後患者(Eighty-one patients)です。神経モビライゼーションを行った群(n=46)と通常の治療群(n=35)にランダムに割付けました。

ベースラインを一部抜粋します。

  Neural Standard
Mean age(yr, SD) 55±17 59±18
Gender(% female) 15(43%) 15(33%)
Radiation into leg 35(100%) 46(100%)
Radiation below the knee 32(91%) 43(93%)
VAS now 35.9±28.8 34.8±26.8
SLR 57.31 59.17

 

介入(I)は、「通常の治療」と「通常の治療と神経モビライゼーション」を行なっています。

通常の治療群(control group):
下肢と体幹のアイソメトリック&ダイナミックエクササイズを行なった。日目は許容できる範囲のエクササイズを実施した。ベッドにいる間は2時間ごとのエクササイズを心がけた。セラピストは1日2回エクササイズを監督し、エクササイズの強度を上げていった。ベッドからでた患者は、1日2〜3回のエクササイズを心がけた。退院時にエクササイズのシートを渡し、最低6週間は継続するようアドバイスを行なった。

神経モビライゼーション群:
通常の治療に加えて、神経モビライゼーションを行なった。神経組織をモビライズするためにアクティブ、パッシブエクササイズを用いた。理学療法士は1日に2回の神経モビライゼーションを行なった。退院時に腰椎仙骨部の神経と坐骨神経のモビライゼーションを含んだエクササイズのシートを渡し、最低6週間は継続するようアドバイスを行なった。

椎間板摘出術(lumbar discectomy)と椎間板固定術(lumbar fusion)

Day 1- 6
各下肢のSLRを6回、疼痛が出現する底屈・背屈を含む *他動・自動は記述なし
頚椎の他動屈曲 6回、可能なら自動

Day 2 
各下肢のSLR 10回
背臥位、頚椎の自動屈曲 10回

固定術(Fusion)

Day1 *回数(repetitions)
他動ROM ex.:股関節と膝関節 6回
他動ROM ex.:頚椎屈曲 6回
股関節屈曲位での膝関節伸展・屈曲 6回

Day2
他動ROM ex.:頚椎屈曲 10回
各下肢のSLR 10回、疼痛が出現する範囲で *他動・自動は記述なし
股関節屈曲位での膝関節伸展・屈曲 10回

Day3
各下肢のSLR 10回、疼痛が出現する範囲で *他動・自動は記述なし
自動ex.:SLR 10回、疼痛が出現する範囲の底屈・背屈

測定項目:
GPE(global perceived effect)、VAS( visual analogue scales)、McGill Pain Questionnaire、Quebec Disability Scale、SLR、return to work or normal acitviteies

結果はというと、

81名の対象者のうち、12カ月の時点で76名(94名)をフォローアップ。

GPE(中央値)は両グループともに2.0、Mann whitney U test では有意差はなかった(P=0.56)。疼痛、機能障害、SLRの反復測定分散分析では、対象者の改善は治療グループ間で差はなかった(P ranged from 0.15 to 0.72)。平均値の差の95%信頼区間は、事前に決められた臨床的に有意な効果(the prespecified clinically significant effect)を含んでいなかった。

反復測定分散分析(repeated measures analysis of variance)とは(外部リンク)

そして、結論は「本研究で用いた神経モビライゼーションのプロトコルは、腰椎術後患者のリハビリテーションの一部に取り入れるべできはない。」ということです。

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分節は動かさない、Slider を用いる

今回、調べたSR、RCTでは、腰椎の術後に対する早期の神経モビライゼーションの効果は不明ということでした。

肯定的な意見もありますが、腰椎の術後に対して神経モビライゼーションをするかどうかは検討する必要がありますね。また。さらなる検証も必要かと思います。

では、過去に腰椎の手術をしてしばらくしてから神経症状が出現した患者はどうでしょうか。整形外科クリニックでは多いですね。

私は評価して、神経の滑走性の低下があったら神経モビライゼーションを実施します。

ただし、分節を動かすような手技(例;側臥位での腰椎側屈)は行わないです。

固定術(fusion)や椎弓切除術 (laminectomy)を行なっており分節を動かすことで不安定性につながる可能性がある場合は、モビライゼーションは実施しません。Slider、Tensioner、などを実施します。また、隣接の胸椎・股関節の機能に対して介入していきます。

神経モビライゼーションの有効性は現在進行形で研究されており、さまざまな報告があります。

腰椎の術後に対する早期の神経モビライゼーションに関する介入研究はとても少ないです。今後の研究に期待です。

引用文献

  • Madera M et al. : The role of physical therapy and rehabilitation after lumbar fusion surgery for degenerative disease: a systematic review, journal of neurosurgery spine, 2017
  • Basson A et al. : The effectiveness of neural mobilization for neuromusculoskeletal conditions: a systematic review and meta analysis, journal of orthopaedic sports physical therapy, 2017
  • Scrimshaw SV, Maher CG. Randomized controlled trial of neural mobilization after spinal surgery. Spine

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