主観的評価:ボディチャート

評価には、主観的評価(Subjective Examination)”問診” と、客観的評価(Objective Examination)”身体評価”があります。

主観的評価がしっかりできることで、客観的評価で行うことが明確になります。

主観的評価が不十分だと客観的評価で行うことが不明瞭になります。

主観的評価を行なって患者から情報を収集し仮説を形成し、次に行う客観的評価の内容を考え、客観的評価で患者から情報を収集し、仮説を修正していき、問題点を判断し治療方法を立案していきます。

主観的評価では、

  • 現病歴
  • ボディチャート
  • 症状の傾向
  • 治療歴
  • 仕事・生活習慣
  • ゴール・期待
  • 機能評価
  • 健康状態
  • 服薬
  • 既往歴

などを確認します。

なお、問診内容は対象者によって異なります。キーパーソン、家族構成、住宅環境といった社会的情報が重要になる場合もあります。

今回は、ボディチャートについて考えたいと思います。

ボディチャート

ボディチャートとは、主観的評価で用いられる身体図のことで、現病歴や症状の傾向と同時に記載することが多いです。

ボディチャートは、患者が受付で記載する最初の問診表に使われている場合もあれば、医師がカルテで使用したりしています。

自分の職場で使われている問診表を一度も見たことない方は、ぜひ一度目を通してみてください。

職場の医師がどういうことを聞いているのかがわかりますし、自分が行う問診内容と比較ができます。

ボディチャートには、患者の症状(疼痛、異常感覚、痺れ、筋力低下など)を記載し、それらの関連性を把握していきます。

疼痛においては、場所、頻度、強さ、性質、深さ、を確認します。

聞く順番は患者や状況によって前後すると思いますが、時間的な制約がある場合でも、場所、頻度、強さ、は最低限聞きたいところです。

場所:疼痛

患者・クライアントが訴える部位に、症状を記載します。

例えば、疼痛の場合、ボディチャートに疼痛部位を「×××」とし、P と記載します。

疼痛が複数ある場合は、Pa, Pb, Pc または P1、P2、P3と記載します(部位別に、例えば股関節の場合、Ph と記載する方法もあります)。

疼痛が強い順にPa、Pb と記載する、疼痛が強い場所の「×××」を濃くするといった方法もあります。

疼痛が複数ある場合、それぞれの症状に関連性があるのか確認する必要があります。

例えば、腰痛に下肢痛があった場合、

「脚はどういう時に痛みますか?」

「腰が痛い時、脚も痛みますか?」

「腰の痛みが強いときは、脚も痛みますか?」

「腰が痛くなくても、脚は痛みますか?」

というように、確認する必要があります。

ここでは、Pa が増悪するとPb誘発ということで「Pa↑→Pb」と記載します。この記載方法もさまざまあります。

もし、腰痛以外に、下肢に疼痛や疼痛以外の症状がある場合、関連痛なのか、神経・血管由来の問題なのか追加の質問で絞り込み、客観的評価にて確認していく必要があります。

腰の動作に関連して下肢の疼痛が誘発される場合、関連痛を示唆します。

場所:疼痛以外の症状

疼痛以外の症状(感覚・運動障害)については、内容を確認してボディチャートに具体的に記載します。

記載方法のとしては、「 P+N(痺れ)::::::: 」、「Numb(感覚低下)===」、「Other(その他)^^^」というように略語と記号を用いてもいいですし、具体的な言葉を加えて記載してもいいと思います(「P+N」は pin and needles 、Numb は numbness の略)。

また、色を変えるなどして記載するとわかりやすいです。

図の例では、「右のふくらはぎに痺れがある、ピリピリする」に対して、「P+N ピリピリ」と記載しました。もちろん「しびれ、ぴりぴり」でも問題ありません。略語を使う利点の1つに記録が早いというのがありますが、”P+N” と”しびれ”では、書くスピードに大差はないと思います。

略語や記号の組み合わせはさまざまなので、複数のセラピストが同一施設で同じ評価用紙を用いる場合、記載方法を統一すると意思疎通がよりはかれると思います。

さて、患者の「痺れます」という言葉ですが、注意が必要です。

痺れは、感覚低下、感覚過敏、異常感覚、また、運動障害の可能性があります。そのため、「痺れ」は客観的評価で何なのか確認する必要があります。

頻度

疼痛が出現する頻度、出現している時間の確認は、炎症の可能性や程度の判断に役立ちます。

疼痛が常にある場合、1日通して疼痛が持続する場合、「onstant (持続)」と判断し炎症の可能性を示唆します。

記載する場合は、cons と省略されることがあります。

痛くない時がある場合、 Intermittent(間欠)と判断し、炎症の可能性は低くくなります。

記載する場合は、Int と省略されることがあります。

持続(Constant)から間欠( Intermittent)になる場合、改善を示しています。逆の場合は悪化を示唆します。

ただし、間欠痛が特徴となる病態(例:LCS)もあるので、病態と照らし合わせて考える必要もあります。

 

強さ

 

痛みの強さは、重症度の判定、効果判定に用いられます。

臨床では、Visual analog scale (VAS)または Numerical rating scale (NRS)が 用いられると思います。

NRSにはいくつか方法があります。

今まで経験した最高の痛みを10として現在の痛みと比較する方法(1,2)

初診時や治療前の痛みを10として現在の痛みと比較する方法(pain relief score)(1, 2)

“0=痛みがない”、“10=想像できる最大の痛み”とした場合の現在の患者の痛みに該当する整数を◯で囲ませるか口頭で数字を回答してもらう(3)

問診例
「痛みの強さですが、0がまったく痛みがない、10が(想像できる最大の痛み/として、
(今の/痛いときの)痛みの強さはいくつですか?」

「痛みの強さですが、0がまったく痛みがない、10が想像できる最大の痛みとして、(今の/痛いときの)痛みの強さを数字で表せますか?」

さて、このNRS ですがなかなか答えられない患者がいます。

NRSを答えられない場合、セラピスト側から痛みの強さの例を提示する、例えば「6.7は薬を飲むくらいです」という提示方法を学びました。

しばらくその方法を使っていたのですが、ふと「6と7って曖昧だな」と思うようになりました。

疼痛を、mild, modelate, severe の3段階に分けて評価する考え方もあります。

薬を飲みたいほどの痛みはかなり強いですよね。3段階でいえば severe に入ると思います。NRSの0と10を外して3段階に分けると1-3 / 4-6 / 7-9 となり、7 以上がsevere と解釈した結果、今は「7が薬を飲みたい時です」としています。また、「10が想像できる最大の痛み」と聞いて答えに悩んでしまう方には、「10は救急車呼ぶくらいの痛み」と言い換えることもあります。

ただ、セラピストが例を提示してもいいのか、提示することで検査の妥当性が変わるのかどうかというのは不明です、調べてもわかりませんでした。

研究でNRS(口頭)を使用する場合は、質問する文章を統一した方がいいでしょう。

ここでは痛みをNRS で評価しましたが、姿勢や動作ごとの痛みの強さを評価することも大切です。姿勢と動作ごとの痛みについては、症状の傾向で確認します。

 

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性質

疼痛の評価は、NRSやVASなどの量的評価だけでなく、質的評価が重要といわれます。

質的評価、つまり、痛みの性質です。

痛みの性質は原因組織を示唆してくれることがありますが、すべてではありません。

例えば、筋・靭帯・関節包の場合、「鈍い、うずく、かまれるような」といった特徴があります。

また、神経・神経根の場合、「鋭い、ピーンと走る、焼けるような」といった特徴があります。

関連痛の場合、「部位の特定が難しい」「深い」といった特徴があります

しかし、痛みの性質を答えられない患者はとても多いです。

「どんな痛みか言葉で表すことはできますか?」と聞くと、答えに悩んでしまう患者は多くいます。

その場合は「○○ですか?それとも○○ですか?」というように選択肢を与えます。

神経障害性疼痛のスクリーニングでは、痛みの性質を利用した自己記入式質問用紙が用いられています。

ここで用いられている言葉も参考になります。

例えば、pain DETECT の場合、

痛みのある部位は、焼けるような痛み(例:ヒリヒリするような痛み)がありますか?

ピリピリしたり、チクチク刺したりするような感じ(蟻が歩いてるような、電気が流れているような感じ)がありますか?

といった質問があります。

疼痛の質的評価は、マギル疼痛質問票(McGill Pain Questionnaire)も参考になります。78個の痛みを表す単語があります。

痛みの性質はたくさんあります。例をあげると

  • aching(鈍く持続的な、うずく)
  • burning (焼けるような)
  • cramping (しめつけるような)
  • dull(鈍い)
  • intolerable(耐えられない)
  • nagging(しつこい)
  • pricking(ちくちく)
  • sharp(鋭い)
  • shooting (走るような)
  • sore(はれたような)
  • tender (さわられると痛い)
  • tingling(ビリビリ)

といったものがあります。

感覚障害の表現は多岐にわたるため日本語を英語に翻訳して記載すると、間違って理解してしまう可能性があるので注意が必要です。

「痺れ」というワードであれば「P+N」としてもいいかもしれませんが、「痺れ」以外のワードであれば患者の表現をそのまま日本語で記載する方がいいでしょう。

例えば「ざわざわする」と言ったら、痺れ、感覚低下、とは別と判断し「Other ざわざわする」と記載します。あくまでも一例です。

深さ

疼痛の場合、存在する部位の深さを確認します。

深さは原因組織を示唆してくれますが、すべてではありません。

表層(Superficial)の場合、筋骨格系の問題であることが多いです。

客観的評価では、圧を加えて再現できる痛みは局部の問題の可能性が考えられます。筋、靭帯、神経などです。ただし、神経の場合は圧痛がある場所が損傷部位ではない場合もあるので注意が必要です。

深部(deep)、または、部位を特定できない場合、関連痛の可能性が高くなります。

問診例としては、「腰の痛みは皮膚に近いですか?それとも、骨に近いですか?」といったものがあります。

患者に応じて、質問方法を変えて、答えやすいようにすると良いでしょう。

 

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症状がない部位は✔︎をつける

症状のある場所の確認は大切ですが、症状がない場所を確認することも重要です。

腰痛が主訴の患者を担当した場合、必ず下肢症状・神経症状がないか確認します。

「お尻より下に何か症状はありますか?」

「膝より下(先)に何か症状はありますか?」

「他に何か症状はありますか?」

「他に痛いところはありませんか?」

症状がなければ、✔︎をつけます。これは、確認したことの証拠になります。

これでボディチャートは完成です。

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ボディーチャートのまとめ

 

ボディチャートは、患者の症状(疼痛、異常感覚、痺れ、筋力低下など)を記載し、それらの関連性を把握していきます。

疼痛においては、場所、頻度、強さ、性質、深さ、を確認します。

質問する順番は、臨機応変に状況に応じて変えます。

初学者の場合、確認事項をボディチャートに記載しておくといいと思います。そして、確認したら✔︎すると聞き漏れがなくなります。

ボディチャートの利点は、症状を把握しやすい、記録しやすい、また、初期評価でなかった症状が出現した時に確認しやすい、といったことが挙げられます。

例えば、上記の患者が4週間後に右下腿の症状を訴えたとします。

初期評価のボディチャートに右下腿が ✔︎がしてありますので、右下腿の症状は、症状増悪なのか新規のものなのか考えることができると思います。

引用文献

  1. 沖田・松原:ペインリハビリテーション 入門, 三輪書店, 2019 
  2. 高橋 et al.:痛みの客観的評価とQOL, Jpn J Rehabil Med Vol. 53 No. 8, 2016
  3. 住谷 et al. :痛みの質的評価と量的評価, Bone.loint Nerve Vol.6No.4, 2016